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令和6年度 座談会



私はいかにして支援・サービスにつながったか


田中(たなか)

ケアやお世話をされている中で感じたことや、考えたことなどについてもお話しいただきます。


ハリー杉山(すぎやま)

父の介護の件で公的な支援につながったきっかけは、高齢の祖母のケアをお願いしていたヘルパーさんが「お父さんもすこし大変な状態ですが、ハリーさんわかっていますか」と言ってくれたからです。このヘルパーさんとケアマネジャーさんの結構アグレッシブな姿勢に救われましたね。向こうから「ハリーさん、忘れないでください。これ結構まずいですよ」と、ちゃんと言ってくれました。僕がこの業界で仕事しているとかは関係なく、一人の人間として向き合ってくれたのは、とても力になりましたね。
あと、僕は介護施設に父親を預けることが最初は本当に嫌でした。本当に僕が間違っていたと思います。介護施設は一度入居したら人生の最後のカウントダウンが始まる場所だと偏見を持っていました。死に向かう場所だと勘違いしていたんです。
しかし施設に入ることで、施設のみなさんのサポートで父親も元気になったし、何より僕も母親もゆっくり寝る時間を持つことができました。寝て、リフレッシュした状況で仕事に向かえる。そして施設側に行くと、ある程度症状をコントロールできている父親がいて、もちろん認知機能が活発になるまでに2、3時間かかります。ずっとマッサージしたり好きな音楽を聞かせるとやっと動き始めるんですが。施設を利用して、父親、僕、母親というトライアングルができたことで、僕は家族と日常を取り戻すことができました。



田中(たなか)

自分の時間も取れたり、睡眠も取れたり、サービスを使うことでそういう時間を持つことができたということですね。


ハリー杉山(すぎやま)

そうですね。でも要介護認定や地域包括支援センター[1]が担っていることなど、行政側がどのような支援を提供しているか、途中まで十分に理解できていませんでした。そのようなケアや支援の一般知識というものが欠けていたんです。それが、家族が病気になることで突然、強制的に知識が必要な状況になってしまった。「そんな時、社会はこういう形で助けてくれる」ということを若い時から知っていれば、父の介護やケアが、随分違ったものになっていたかもしれないですね
あと、介護の初期にみなさんの力を借りる段階では、僕自身「拒否」の気持ちしか持てなかったんです。人に相談しても、結局「頑張って」とか「何とかなるよ」などというアドバイスが80%なんですよ。ただ、それは仕方ないかもしれない。だって、プロじゃないから。でも「プロの人と、実は簡単に連絡が取れたり、すぐに会える」という知識をみんなが共有できれば、社会は変わっていくような気がします
僕の話だけじゃなくて、皆さんにも聞いてみてもいいですか?
しゅんた君には相談を聞いてくれる人はいましたか?
[1]市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置し、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設


座談会の様子

しゅんた

はい、いました。中学校のスクールカウンセラーの方や市のこども家庭支援センターのスタッフの方です。あとはNPO法人[2]の方。そこが運営しているこども食堂、親子食堂に来ていたご家庭の親子が集会所に集まってご飯を食べる会があって、僕も参加していろいろお話をさせていただいていました。
[2]「営利を目的とせず社会貢献をする団体」を指し、正式名称は「特定非営利活動法人」という



ハリー杉山(すぎやま)

そこに参加するきっかけはどんなことでしたか?


しゅんた

家庭のゴタゴタが起こり始めた中学生の時に、母親から「児童相談所に行った方がいい」と言われたことがあって、それを担任の先生に相談しました。先生に話していたら泣いてしまって、多分自分で思っていたよりもしんどかったでしょうね。先生が心配してスクールカウンセラーに伝えてくれて、社会福祉の制度が必要だと判断され、ソーシャルワーカーにつなげてくれました。そのような流れでこども食堂に行くようになり、つながりがどんどん増えていきました。



田中(たなか)

制度やサービスにつながった時の状況というのは、「自分が相談して何とかしないといけない」という考えがあったのでしょうか?「一輝」さんいかがですか。



一輝(かずき)

とにかく現状を変えたい一心でしたね
やはり苦しいし、気持ちをポジティブに変えたいと思っても一人じゃどうしようもないと考えて、少しでも発散できる場所があればいいなと思い行動しました。
若者のシェアハウスの支援しているNPO法人に行き、そこでギターを教えてもらいました。コミュニケーションの訓練にもなるので、そういうのもいいなと思います。こういった場を通じて視野が広がったと感じています。