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令和(れいわ)7年度(ねんど) 座談会(ざだんかい)

目次(もくじ)





これからの支援(しえん)のあり(かた)方法(ほうほう)について


田中(たなか)

みなさんのヤングケアラーの(かた)(つた)えたいメッセージを()まえて、具体的(ぐたいてき)支援(しえん)のあり(かた)やその方法(ほうほう)について、(もと)めることや(おも)いはありますか?



高岡(たかおか)

むっちさんも(はな)していましたが、ヤングケアラーという知識(ちしき)がないと、ただ(なま)けていると()めつけられてしまうことが(おお)いんです。学校(がっこう)で、宿題(しゅくだい)ができていなかったり、(つか)れて居眠(いねむ)りしてしまったりすると、ダメな生徒(せいと)()られる。そういう理不尽(りふじん)()めつけは、こどもの(こころ)をどんどんふさいでしまうと(おも)います。だからまずは、大人(おとな)が「この()にはヤングケアラーという背景(はいけい)があるかもしれない」という視点(してん)をもった(うえ)(かか)わってほしいですね。


それから、(はなし)()いてもらえること自体(じたい)はありがたいのですが、「お(とう)さんは(なに)をしているの?」「(ほか)家族(かぞく)()()けられたのでは?」と、家族(かぞく)(だれ)かを悪者(わるもの)にするような()(かた)をされると、とても(くる)しくなります。家庭(かてい)関係性(かんけいせい)(なが)時間(じかん)をかけて(きず)かれてきたもので、状況(じょうきょう)()えられていない自分(じぶん)をかえって()めてしまいます。だからこそ、解決策(かいけつさく)提示(ていじ)する(まえ)に、まずは最後(さいご)まで(はなし)()()ってもらいたいと(おも)います。


さらに、社会人(しゃかいじん)になってからケアに専念(せんねん)する生活(せいかつ)(つづ)くと健康診断(けんこうしんだん)()ける機会(きかい)がなかったり、メンタル不調(ふちょう)(かん)じてカウンセリングを()けたくても費用(ひよう)負担(ふたん)(おお)きく、自身(じしん)のケアまで()(まわ)らないことも重要(じゅうよう)課題(かだい)ですね。


また、ケアのために現実的(げんじつてき)就労(しゅうろう)(むずか)しい場合(ばあい)履歴書(りれきしょ)(のこ)空白(くうはく)問題(もんだい)です。本当(ほんとう)家族(かぞく)(ささ)えていた大切(たいせつ)時間(じかん)なのに、社会(しゃかい)からは(なに)もしていなかった()なされてしまう。ケアを(にな)った経験(けいけん)をきちんと価値(かち)として(みと)める仕組(しく)みが必要(ひつよう)ですし、ただの空白(くうはく)ではなくケアラーとして()ごし、ケアという(かたち)社会(しゃかい)にかかわっていた時間(じかん)だと社会全体(しゃかいぜんたい)理解(りかい)してくれるようになることを(ねが)っています。



ぽむぽむ

(たし)かにそうですね。その空白期間(くうはくきかん)反対(はんたい)にアドバンテージになるような、これだけヤングケアラーとしてその家族(かぞく)(ささ)えることができていたことについて、付加価値(ふかかち)のつく名前(なまえ)なのか資格(しかく)みたいなものなのか、()かりやすいものがあるといいなって(おも)いました。



ナミレオ

スクールソーシャルワーカー[16]存在(そんざい)って、本当(ほんとう)(おお)きいと(おも)うんです。
学校(がっこう)先生(せんせい)はケアに(かん)する専門知識(せんもんちしき)経験(けいけん)()っているわけではありません。だからこそ、そうした知識(ちしき)()(ひと)学校(がっこう)にいることは必要(ひつよう)だと(おも)うんです。ちょっとした変化(へんか)気付(きづ)いてくれる大人(おとな)存在(そんざい)って、とても大事(だいじ)だと(おも)うんですよね。


先生(せんせい)一人(ひとり)で30人以上(にんいじょう)生徒(せいと)()ているわけですから、どうしても(こま)かい変化(へんか)気付(きづ)くのは(むずか)しい。だからこそ、そういう部分(ぶぶん)()てくれるスクールソーシャルワーカーの存在(そんざい)はすごく重要(じゅうよう)だと(かん)じています。


[16]いじめ、不登校(ふとうこう)暴力行為(ぼうりょくこうい)児童虐待(じどうぎゃくたい)など、子供(こども)(かか)える様々(さまざま)課題(かだい)解決(かいけつ)(みちび)くため、教育(きょういく)福祉(ふくし)(つな)いで援助(えんじょ)する職員(しょくいん)



田中(たなか)

最近(さいきん)では、中学校(ちゅうがっこう)学区(がっく)ごとにスクールソーシャルワーカーを1(にん)ずつ配置(はいち)していこう、という方針(ほうしん)()自治体(じちたい)()えてきています。中学校(ちゅうがっこう)1(こう)(たい)して、2〜3(こう)小学校(しょうがっこう)(ふく)めた圏域(けんいき)担当(たんとう)する(かたち)で、その地域(ちいき)(まわ)りながら支援(しえん)にあたるイメージです。


ただ、自治体(じちたい)によってはこどもや家庭(かてい)(がわ)から()()げない(かぎ)り、スクールソーシャルワーカーに()えないという仕組(しく)みになっているところもあります。そうなると、そもそも「(こま)っている」と(こえ)をあげにくいこどもたちが支援(しえん)にたどり()けないという課題(かだい)(のこ)っているようです。


田中


むっち

自分(じぶん)仕事(しごと)でこどもの支援(しえん)(かか)わっています。やりがいは(おお)きく、こどもたちが日頃(ひごろ)()になっていることを()いたり、本当(ほんとう)(こま)っていることがあれば自治体(じちたい)などに連絡(れんらく)して仲介(ちゅうかい)したり、保護者(ほごしゃ)にこどもの意見(いけん)(つた)えたりしています。


仕事(しごと)自体(じたい)はやりがいもあり成長(せいちょう)(かん)じられて(たの)しいのですが、福祉(ふくし)関係(かんけい)仕事(しごと)給料(きゅうりょう)(めん)(きび)しい現状(げんじょう)があります。こどもたちの(はなし)親身(しんみ)()き、(ささ)える大切(たいせつ)仕事(しごと)であるにも(かか)わらず、待遇面(たいぐうめん)改善(かいぜん)されないために()めてしまう(ひと)(おお)いです。



おかりな

(わたし)(かんが)えるヤングケアラー支援(しえん)課題(かだい)は、(おお)きく3つあります。
1つ()は、学校(がっこう)大学(だいがく)社会福祉士(しゃかいふくしし)[17]やキャンパスソーシャルワーカー[18]があまりいないということです。小中高(しょうちゅうこう)はもちろん、大学(だいがく)にもこうした専門職(せんもんしょく)がいることで、こどもたちの支援(しえん)につながるきっかけを(つく)れると(おも)います。


2つ()は、(よる)()()がないことです。(わたし)()(しん)、ケアの最中(さいちゅう)家庭内(かていない)でのけんかなどで(いえ)()づらい(よる)があり、どこにも()けず一人(ひとり)でコインランドリーで()ごすこともありました。日中(にっちゅう)居場所(いばしょ)(おお)くても、(よる)安心(あんしん)して()ける場所(ばしょ)(かぎ)られていると(おも)います。


3つ()は、ケアの経験(けいけん)成長(せいちょう)段階(だんかい)表出(ひょうしゅつ)できる()必要性(ひつようせい)です。ケアをしていたときは「(たす)けて」と()えなかったけれど、大人(おとな)になり経験(けいけん)(はな)せる機会(きかい)があると、ライフステージが(すす)自分(じぶん)人生(じんせい)(かか)わる課題(かだい)出会(であ)ったときにも()()いやすくなると(おも)います。(こころ)(きず)整理(せいり)し、言葉(ことば)にする()があることは、(こころ)安定(あんてい)にとても重要(じゅうよう)だと(かん)じます。


[17]身体(しんたい)精神上(せいしんじょう)障害(しょうがい)あるいは環境上(かんきょうじょう)理由(りゆう)などにより、日常生活(にちじょうせいかつ)(いとな)むのに支障(ししょう)がある(ひと)社会生活上(しゃかいせいかつじょう)困難(こんなん)(かか)えている(ひと)(たい)し、福祉(ふくし)(かん)する相談(そうだん)助言(じょげん)指導(しどう)、その(ほか)援助(えんじょ)(おこな)専門職(せんもんしょく)[18]大学(だいがく)専門学校等(せんもんがっこうとう)学内(がくない)生活(せいかつ)困難(こんなん)(かか)える学生(がくせい)(たい)して相談(そうだん)(おう)じ、必要(ひつよう)支援(しえん)につなげる専門職(せんもんしょく)



ゆい

ヤングケアラーのサポート活動(かつどう)をしていると「法令的(ほうれいてき)根拠(こんきょ)予算(よさん)がないと実現(じつげん)できない」と()われることが(おお)く、(わたし)(かか)われる範囲(はんい)(かぎ)られているなと(かん)じることが(おお)くあります。
その(なか)でも、学校(がっこう)でケアについて(おし)えることはとても大事(だいじ)だと(おも)っています。
学校(がっこう)でケアの(はなし)をすることを(いや)がる()もいるかもしれませんが、ケアは特別(とくべつ)なことではなく、(だれ)にでも(かか)わる可能性(かのうせい)があることです。できれば、行政(ぎょうせい)(かた)やこどもたちが(かか)わる専門家(せんもんか)学校(がっこう)()て、「こういう支援(しえん)がある」「こんなことをしてくれる」と(おし)えてくれると、より安心(あんしん)できるのではないでしょうか。


ゆい


ぽむぽむ

学校(がっこう)行政(ぎょうせい)子供食堂(こどもしょくどう)[19]居場所(いばしょ)づくりなど、個々(ここ)にこどもへの支援(しえん)(おこな)っている場所(ばしょ)(おお)くあります。ですが、それぞれの活動内容(かつどうないよう)や、現場(げんば)(こま)っていることを共有(きょうゆう)できるネットワークがあれば、もっと支援(しえん)がつながりやすくなると(おも)います。


おかりなさんの(はなし)にもありましたが、(よる)に「(いえ)にいたくない」「SOSを()したい」と(おも)うこどもは(おお)いと(おも)います。そういうこどもが安心(あんしん)して()ごせる場所(ばしょ)があれば、ボランティアやこどもが(あつ)まり、家族(かぞく)支援(しえん)ネットワークについて(はな)したり、意見交換(いけんこうかん)したりすることもできると(おも)います。理想(りそう)は、(つき)に1(かい)ではなく、毎日(まいにち)(ひら)かれる場所(ばしょ)です。時間(じかん)余裕(よゆう)のある高齢(こうれい)(かた)社会貢献(しゃかいこうけん)したい(かた)も、こどもたちに(おし)える()として参加(さんか)するなど、多世代(たせだい)(かか)わるネットワークを(つく)ることで、つながる仕組(しく)みができるのではないかと(かんが)えています。


[19]地域(ちいき)子供(こども)保護者(ほごしゃ)気軽(きがる)立寄(たちよ)り、栄養(えいよう)バランスの()れた食事(しょくじ)をとりながら、相互(そうご)交流(こうりゅう)する()民間団体等(みんかんだんたいとう)提供(ていきょう)する取組(とりくみ)



田中(たなか)

みなさん、ありがとうございます。とても具体的(ぐたいてき)なお(はなし)()くことができました。





座談会(ざだんかい)()えて



~スペシャルゲスト 高岡里衣(たかおかりえ)さんより~

みなさん一人(ひとり)ひとりがこれまで(かか)えてこられた(おも)いや、(いま)(かん)じられていることに()れられて、とても(とうと)時間(じかん)()ごすことができました。大切(たいせつ)なお(はなし)()かせていただきありがとうございました。


大人(おとな)にとっても、()いや病気(びょうき)()(おな)じようにケアをタブー()してしまう部分(ぶぶん)があると(おも)っています。大人(おとな)大変(たいへん)なことを(かく)そうとしたり、(まわ)りに(はな)さなかったりする空気(くうき)があると、こどもたちもそれを(かん)()り、(こえ)()げたり(だれ)かに相談(そうだん)したりしにくくなることもあります。
だからこそ、社会全体(しゃかいぜんたい)で「(たよ)ることはふつうのこと」という姿勢(しせい)(しめ)し、大人(おとな)(すす)んで支援(しえん)()けたり相談(そうだん)したりする姿(すがた)()せることが、こどもたちが(すこ)しでも(ひと)社会(しゃかい)(たよ)りやすくなるきっかけになるのではないかと(おも)います。


(あらた)めて、(こん)(かい)本当(ほんとう)にありがとうございました。




~ファシリテーター 田中悠美子(たなかゆみこ)さんより~

この座談会(ざだんかい)(つう)じて(あらた)めて2つのことを(つよ)(かん)じました。


1つ()は、ケアをしている(ひと)にしっかり()()け、その(こえ)()(つづ)けることです。(はな)したいタイミングでちゃんと(はなし)()くこと、(はな)してもいいと(おも)える環境(かんきょう)(つく)ることも大切(たいせつ)だと(おも)います。()(つづ)けることの重要性(じゅうようせい)(あらた)めて(かん)じました。


2つ()は、ネットワークづくりの大切(たいせつ)です。支援者(しえんしゃ)同士(どうし)安心(あんしん)して(はたら)き、(たが)いにサポートし()える環境(かんきょう)が、こどもやケアを()ける(ひと)支援(しえん)にもつながると(おも)います。社会全体(しゃかいぜんたい)(ささ)えるという意味(いみ)でも、このつながりは()かせません。


さらに、家族全体(かぞくぜんたい)()視点(してん)重要(じゅうよう)です。世代(せだい)性別(せいべつ)()わず、ケアをしている(ひと)(こえ)をきちんと()くことが必要(ひつよう)だと(かん)じました。
(こん)(かい)、こうして(みな)さんに出会(であ)え、(おも)いを共有(きょうゆう)できたことを本当(ほんとう)にうれしく(おも)います。ありがとうございました。








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